top of page

ABOUT ME

~染~

​刈りとったばかりの羊毛にはじめてふれたとき、大地のにおいがした。一日かけて丁寧にあらってみると、まっしろなふわふわの羊毛に変わった。お日さまのにおいがした。

目の前に色とりどりの染料が並ぶ。なんだかわくわくした。その中から、よく晴れた日の空の色を手にとって、使い古した瓶に入れる。瓶に水をそそぐ。瓶のなかに空がうまれた。その中に、庭に咲くヒマワリの花の色のカケラを入れてみる。瓶のなかに緑がうまれた。なんだか魔法みたいだ。

緑色の水のなかに、羊毛を浮かべる。まっしろな羊毛は、すこしずつ緑色に染まっていく。

今日の色は今日だけのもの。今日の幸せをまとった色は、もう作れないかもしれない。明日はどんな幸せの色が生まれるのだろう?

~紡~

カラカラ、カラカラカラカラ。

一面、緑色の世界で、一羽のつるが紬(つむぎ)ぐるまのまえに座っている。

おつるは、緑色の羊毛をすこしずつ手にとって、紬ぐるまを回している。すこしずつ緑色の長い糸ができていく。ところどころに、青や黄色や白が混じっている。

​今日の糸は今日だけのもの。今日の幸せをまとった糸から、なにがうまれるのだろう?

 

~織~

カタン、コトン、トンカラリ。

奥の部屋のなかから、ずっと機織りのオトがしている。

そっとのぞくと、一羽のつるがいた。

おつるはこちらに気づくことなく、緑色のマフラーを織っていた。森みたいな、海みたいな、太陽みたいな色の不思議なマフラーだった。

大切に大切に織られたマフラーは、だれへの贈り物だろう?

しばらくして静かになった部屋をのぞいてみると、だれもいなかった。

机のうえに、リボンのかかったマフラーが置かれていた。

「幸せをまとう」をコンセプトに。

ひとつひとつの制作物に、幸せのタネを宿したい。

占のチカラをつかい、風を読み、時期をみて、幸せのタネの落ちてくるときを探す。そこに、染、紡、織を重ねてみる。

生まれた布には、きっと幸せが宿っているはずだ。

​工房026(おつる)が作り出すものは、そんなちょっと不思議なものたち。

 

染織家・占術家 阿石麻里

hokusai.jpg

葛飾北斎「凱風快晴」 絵織り

bottom of page